【職人技の結晶】野球グローブはどのように作られるのか

野球グローブの基礎知識

【皮から革、そしてグローブ】野球グローブはどのように作られるのか徹底解説!

こんなお悩みを解決できます!

  • 野球のグローブって何でできているんだろう?
  • 将来の夢はグローブ職人になりたいな!
  • プロ野球選手のグローブと市販のグローブは何が違うのかな。

当サイトでもメインで取り扱っている「野球グローブ」。

牛の革で作られていることはご存知の方も多いと思いますが、製造工程まで熟知されている方は少ないのではないでしょうか。

そこで当記事では、牛から取った皮がグローブになるまでの製造工程を詳しく解説します。

この記事を読めば、グローブ職人の技術の凄さを知ることができます。

野球グローブの製造工程を知って、愛用しているグローブをより大事に扱う心を持ちましょう。

野球のグローブは、職人の手作業によって非常に細かく丁寧に作られます。その製造プロセスには多くの工程があり、品質と耐久性を高めるための工夫が施されています。

皮から革へ(タンナー工場)

革(レザー)の写真

まず初めに、グローブの材料となる革(牛革)が出来上がるまでの工程を解説します。グローブの製造工程だけ知りたい方はこちらにスキップ。

簡単に工程をまとめると以下の通りとなります。

皮から革になるまでの流れ(タンナー工場)

  • 原皮の洗浄
    • 「脱毛」「脱脂」「洗浄」を行い、皮以外の余計な物を落とす。
  • 鞣し作業
    • 特別な薬剤をに浸けて、皮の硬化や腐敗を防ぐために施される作業。
    • グローブ用の革については、「クロム鞣し」を採用している場合が多い。
  • 染色と加脂
    • 革への着色作業と、柔軟性を高める加脂作業を行う。
  • 乾燥
    • ゆっくりと時間をかけて革を乾燥させていく。
  • 仕上げ加工
    • 必要に応じて表面を磨いたり、コーティング剤を塗布する。

牛から取った「皮」はタンナー (皮を革にする製革業者)によって、鞣し(なめし)という工程を経て、私たちの身近な「革」に加工します。

工場によって細かな製造工程の違いがありますので、ここでは一般的なタンナー による鞣しの工程をご紹介します。

タンナー工場 工程①:原皮の洗浄

タンナー が仕入れる皮には、体毛や脂肪が付着した状態のままになっています。

そのため、まずは薬品で洗浄してそれらを落とします。

薬品を使った洗浄ポイント

  • 脱毛:原皮を石灰液に浸け、毛や汚れを除去します。
  • 脱脂:皮に残っている脂肪分を除去します。
  • 洗浄:水で洗い流し、不純物を取り除きます。

これらの洗浄を終えることで、革への加工の準備が完了します。

タンナー工場 工程②:鞣し作業

本来の皮だけの状態になったものを鞣していきます。

※鞣し(なめし)とは、皮が乾燥によって硬化したり、湿度によって腐敗してしまうのを防ぐために施される作業のことです。

主に、牛皮の鞣しで行われるのは以下の2パターンがあります。

牛皮の鞣し方法

  • 植物タンニン鞣し
    • 植物(主にミモザ)から抽出されるタンニン液に浸す方法。
    • 時間がかかる(2週間〜数ヶ月)が、堅牢で自然な風合いの革が得られます。
    • 使い込むことで革が柔らかくなり色艶が増してくるので、経年変化を楽しめる。
    • 革の小物製品によく採用される。
  • クロム鞣し
    • クロム塩を混ぜた液に浸す方法。
    • 柔軟で耐久性が高い革を短時間で鞣すことが出来る。
    • グローブは基本的にクロム鞣しが採用されている。

この作業が完了すると、皮(スキン)から革(レザー)になります。

タンナー工場 工程③:染色と加脂

次に、鞣し作業が終わった革を染色して、油分を足していきます。

染色と加脂は同時に行われる場合が多く、オーダーに沿った革に加工していきます。

染色と加脂のポイント

  • 染色
    • 染料を使って、革の内部まで染めていく。
    • 「染料」・・・溶剤に溶ける。光に長時間当たると色褪せしやすい。
  • 加脂
    • 革に柔軟性を持たせるために油脂を加える。
    • グローブは開閉時に佑何世が求められるため、この工程が特に重要。

染料と脂を入れた大きなドラム容器に、革を一晩中浸しておくことで、革の内部まで浸透していきます。

タンナー工場 工程④:乾燥

前工程の染料や油脂を定着させるために、革を乾燥させていきます。

また、この段階では革に水分が含まれているため、加工しやすいようにする役割もあります。

乾燥方法はいくつかあり、革の状態や仕上がりをイメージして、最適な方法で乾燥させます。

革の乾燥方法

  • セッティングマシン(水絞り・伸ばし用マシン)を使用する
    • 革をプレスし、内部に含む水分を絞り出す。
    • セッティングマシンだけでは完全に乾燥させることはできない。
  • 乾燥器を使用する
    • 真空状態にして乾燥させる機械や、熱風を当てて乾燥させる機械などを使用して、意図的に乾燥速度を早める。
    • 乾燥時間が短縮されるが、革がダメージを受けてしまうリスクがある。
  • 自然乾燥させる
    • ポールに革を掛けた状態で、自然の風のみで乾燥させる方法
    • 革へのダメージが最も少ないが、完全に乾くまで時間が掛かる。
  • ネット張り乾燥をする
    • 革をネット(網)状の板に固定し、四方から引っ張って平らな状態にし、乾燥させる方法。
    • 平らな状態にすることで、革のシワを伸ばす効果がある。

様々な乾燥方法の中から、1つまたは複数の方法を選んで乾燥させています。

タンナー工場 工程⑤:仕上げ加工

乾燥が完了した革は、最後に必要な加工を施して出荷されます。

グローブの場合では、「表面塗装」や「型押し加工」などがあります。

革の乾燥方法

  • 表面塗装
    • 顔料を使って、革の表面の発色や艶を良くする加工。
    • 「顔料」・・・ 溶剤に溶けない。耐光性や耐水性に優れている。
  • 型押し加工
    • 革に凹凸を作って模様をつけていく加工。(ワニ柄、ヘビ柄など)
    • 熱した状態の型がついた金属板を革にプレスすることで模様がつく。

このような鞣し工程を経て、柔軟性や耐久性、加工性に優れた革が作られます。

全ての工程が完了したら、検品を行い、各メーカーのグローブ工場へ引き渡されています。

革からグローブへ(グローブ工場)

レザークラフトをする様子の写真

次はタンナー工場で仕上がった1枚の革から、グローブが完成するまでの工程を解説します。

ここからの作業は、各グラブメーカーの工場で作業が行われます。

簡単に工程をまとめると以下の通りとなります。

革からグローブになるまでの流れ(グローブ工場)

  • 革の選定
    • 在庫の中からオーダーに合った革を選ぶ。
    • グローブに使用される革はステア(成牛)、キップ(子牛)、和牛などがある。
  • 革の裁断・穴あけ
    • 選定した革から、どの部分を使用するか位置決めする。
    • 各パーツの金型を革にプレスすることで裁断・穴あけをする。
    • プロ野球選手向けのグローブは既製品からアレンジが加えられているため、手作業で裁断されることもある。
  • 刻印・刺繍
    • グローブを縫製した後では革が平らにならないため、縫製前のこの段階でパーツごとに加工を行う。
  • パーツの縫製
    • 革パーツ、ハミダシ 、ヘリ革を糸で縫い合わせる。
    • 手作業でグローブの形に縫製する。
  • 芯材の装着・紐通し
    • 親指・小指・土手の3箇所に芯材(内芯)を入れる。
    • 各部分をつなぐために、革紐を通す。
    • ここまでの作業が終わると、グローブとしての形が完成。
  • 仕上げ(軽めの型付け)
    • グローブの指の向きやポケットの成形などを軽く調整し、型のガイドをつける。
  • 完成品のパッケージング
    • 最終的な検品を行い、パッケージングして、個人や店舗に出荷。

メーカーや製造するモデルによって細かな製造工程の違いがありますので、ここでは一般的な製造工程をご紹介します。

グローブ工場 工程①:革の選定

まずは革の選定を行います。

メーカー(グローブ工場)は大量の革を仕入れて保管しています。

その中から、オーダーに合った革を選びます。

グローブの革選びのポイント

  • グローブに使用される革はステア(成牛)、キップ(子牛)、和牛などがある。
  • 成牛の革1枚から、およそ3〜4個のグローブを作ることができます。

グローブに使われる革の種類については、別記事で詳しく解説していますので、こちらも読んでください!

合わせて読みたい!

【素材にこだわる】野球グローブの革はどんな種類があるのか解説!
【素材にこだわる】野球グローブの革はどんな種類があるのか解説!

2025/5/30

こんなお悩みを解決できます! 野球のグローブって何でできているんだろう? ステア ...

グローブ工場 工程②:革の裁断・穴あけ

続いて、グローブのパーツに沿って裁断・穴あけしていきます。

選定した革から、どの部分を使用するか位置決めします。

使用する位置はある程度決まっており、重要な捕球面はハリのある背中や尻部分などを使用し、それ以外のパーツは首や腹部を使用する場合が多いです。

裁断方法は、各パーツ(捕球面、指部分、ウェブ部分など)の金型を使用したい革の位置に合わせてプレスすることで裁断・穴あけします。

裁断のほとんどは機械で行われますが、プロ野球選手向けのグローブは既製品からアレンジが加えられているため、手作業で裁断されることもあります

グローブ工場 工程③:刻印・刺繍

裁断された革は、次に刻印や刺繍の加工を行っていきます。

グローブを縫製した後では革が平らにならないため、縫製前のこの段階でパーツごとに加工を行っています。

刻印・刺繍作業のポイント

  • 刻印
    • 熱した真鍮の印を、捕球面、親指、小指のパーツに捺印(刻印)する。
  • 縫製
    • オーダーグローブなどで刺繍を注文された場合は、平裏や指パーツに刺繍を行う。

完成後の形を想像しながら、的確な場所に加工を行う技術は経験の賜物です!

グローブ工場 工程④:パーツの縫製

パーツの下準備が完了したら、手作業でグローブの形に縫製していきます。

革専用のミシンを使って、革パーツ、ハミダシ 、ヘリ革を糸で縫い合わせます。(ここでの糸は革紐ではなく、ステッチのこと)

縫製は細かな作業でありながら、グローブの最終的な形や耐久性に大きく影響するため、最も重要な作業と言えます。

グローブ工場 工程⑤:芯材の装着・紐通し

パーツの縫製が終わりグローブの形になったら、次は芯材の装着と紐通しをします。

芯材の装着・紐通しのポイント

  • 芯材の装着
    • 親指・小指・土手の3箇所に芯材(内芯)を入れる。
    • 芯材はフェルト(羊毛を圧縮して固めたもの)やパットン(糸くずを圧縮して固めたもの)などの種類がある。
  • 紐通し
    • 各部分をつなぐために、革紐を通します。
    • 革紐の締め具合はグローブの感触が変わるため、慎重に調整します。

ここまでの作業が終わると、グローブとしての形が完成します。

グローブ工場 工程⑥:仕上げ(軽めの型付け)

グローブとしての形が完成したので、そのまま出荷しても良いのですが、近年では軽めの型付けをした状態で出荷されることが多いです。

なぜなら、この時点でのグローブは硬すぎて全く開閉ができない状態だからです。

そこで、グローブの指の向きやポケットの成形などを軽く調整し、型のガイドをつけています。

グローブ工場 工程⑦:完成品のパッケージング

仕上げまで完了したグローブに対して、最終的な検品を行い、縫製や形状に問題がないか確認します。

問題がなかったグローブは、丁寧にパッケージングして、個人や店舗に出荷されていきます。

ここまでの長い過程を経て、私たちが使うグローブは出来上がっています。

参考動画の紹介

ここまで文字で解説してきた、皮からグローブになるまでの工程について、

YouTubeで動画が公開されていますので、参考にご紹介いたします。

【タンナー 工場】鞣し工程の作業動画

鞣しの工程は、大阪でグローブを製造する「てっぺん」が運営するてっぺんチャンネルさんが公開してくれています。

実際にてっぺんのグローブで使用しているレザーの製造工程を紹介してくれています。

出典:てっぺんチャンネル【Teppen】

【グローブ工場】グローブ製造の解説動画

グローブの製造工程は、大手野球メーカーのミズノが公開してくれています。

グローブ好きなら一度は耳にしたことがある、「ミズノ 波賀工場」での製造工程が見れます!

出典:MIZUNO BASEBALL JP

まとめ

野球には欠かせないグローブがどのように作られているのかわかりましたでしょうか。

ここまで解説した内容をまとめると、

グローブが出来るまでのポイント

  • 牛から取った皮を鞣して革にする
  • グローブができるまでには、多くの工程がある
  • グローブ製造に携わってくれた方に感謝して、グローブを使っていきましょう!

野球のグローブ作りには、革の特性を理解する深い知識と、高度な技術が必要です。

それぞれのグローブメーカーは、日々研究を重ねて、現代の高品質なグローブが誕生しています。

グローブ職人さんの技術を持って出来上がったグローブを、私たちは使わせていただいているという気持ちが大事です。

これからもグローブ好きとして、グローブ職人に感謝しながら、野球グローブを愛していきましょう!

広告

  • この記事を書いた人
グローブ道のプロフィール

グラブ愛好家 Mr.G

名前:Mr.G(ミスタージー)

野球歴20年以上のグローブ愛好家

野球初心者からベテランまでの全野球人向けに野球グローブ専門の情報を発信していきます!

野球グローブでお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。

-野球グローブの基礎知識