当サイトでもメインで取り扱っている「野球グローブ」。多くは牛の革で作られているのはご存知の方も多いと思いますが、製造工程まで熟知されている方は少ないのではないでしょうか。
当記事では、牛から取った皮がグローブになるまでの製造工程を詳しく解説します。この記事を読めば、グローブ職人の技術の凄さを知ることができます。
野球グローブの製造工程を知って、愛用しているグローブをより大事に扱う心を持ちましょう。
野球のグローブは、職人の手作業によって非常に細かく丁寧に作られます。その製造プロセスには多くの工程があり、品質と耐久性を高めるための工夫が施されています。
皮から革へ(タンナー工場)

まず初めに、グローブの材料となる革(牛革)が出来上がるまでの工程を解説します。グローブの製造工程だけ知りたい方はこちらにスキップ。
牛から取った「皮」を、鞣し(なめし)という工程を経て、私たちの身近な「革」に加工します。
工場によって細かな製造工程の違いがありますので、ここでは一般的な鞣しの工程をご紹介します。
原皮の準備
牛から取った皮には、体毛や脂肪が付着した状態のため、薬品で洗浄してそれらを落とします。
- 脱毛:原皮を石灰液に浸け、毛や汚れを除去します。
- 脱脂:皮に残っている脂肪分を除去します。
- 洗浄:水で洗い流し、不純物を取り除きます。
鞣し
鞣し(なめし)とは、皮が乾燥によって硬化したり、湿度によって腐敗してしまうのを防ぐために施される作業のことです。
主に、以下の2通りで鞣し作業が行われます。
- 植物タンニン鞣し:
- 植物から抽出されるタンニン液に浸します。
- 時間はかかりますが、堅牢で自然な風合いの革が得られます。
- クロム鞣し:
- クロム塩を使用して鞣します。
- 柔軟で耐久性が高い革が得られ、野球のグローブなどに適しています。
中和
- 皮に残った酸を中和し、pHを調整します。
- 後の加工をスムーズにするための工程です。
染色と加脂
- 染色:
- 必要に応じて皮を染色します。
- 加脂:
- 革に柔軟性を持たせるために油脂を加えます。
- グローブのような用途には、この工程が特に重要です。
乾燥
- 革をゆっくりと乾燥させます。
- 速乾すると革が硬くなるため、慎重に進めます。
仕上げ加工
- 必要に応じて表面を磨いたり、コーティング剤を塗布したりします。
- 光沢や撥水性、耐摩耗性を向上させることができます。
このような鞣し工程を経て、柔軟性や耐久性、加工性に優れた革が作られます。
野球のグローブに使われる革は、特に柔軟性と耐久性が重視されるため、クロム鞣しや特別な加脂処理が施されることが一般的です。
革からグローブへ(グローブ工場)

次は1枚の革からグローブが完成するまでの工程を解説します。
ここからの作業は、各グラブメーカーの工場で作業が行われます。
メーカーや製造するモデルによって細かな製造工程の違いがありますので、ここでは一般的な製造工程をご紹介します。
革の選定
- グローブに使用される革はステア(成牛)、キップ(子牛)、和牛などがあります。
それらの中からグローブに合った革を選定します。 - 成牛の革1枚から、およそ3〜4個のグローブを作ることができます。
別記事でグローブの革の種類について解説していますので、こちらも読んでください!
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革の裁断・穴あけ
- 選定した革から、どの部分を使用するか位置決めします。(捕球面はハリのある背中や尻部分など)
- グローブの各パーツ(捕球面、指部分、ウェブ部分など)を金型に合わせて裁断・穴あけします。
- 裁断のほとんどは機械で行われますが、プロ野球選手向けのグローブは既製品からアレンジが加えられているため、手作業で裁断されています。
刻印・刺繍
- 熱した真鍮の印を、捕球面、親指、小指のパーツに捺印(刻印)します。
- オーダーグローブで刺繍を注文された場合は、平裏や指パーツに刺繍を行います。
グローブを縫製した後では、革が平らにならないため、縫製前の段階でパーツごとに加工を行っています。
成形後の形を想像しながら行う作業は、経験と技術の賜物ですね。
パーツの縫製
- 革パーツ、ハミダシ 、ヘリ革を糸で縫い合わせます。(ここでの糸は革紐ではなく、ステッチのこと)
- 縫製は細かな作業でありながら、グローブの最終的な形や耐久性に大きく影響するため、職人の技術が重要です。
紐通し
- 各部分をつなぐために、革紐を通します。
- 革紐の締め具合はグローブの感触が変わるため、慎重に調整します。
- この段階でグローブとしての形が完成します。
仕上げと成形
- 形は出来上がりましたが、硬さがあり使用できないため、軽めの型作りをします。
- 指の向き調整や、ポケットの成形などを行い、理想の形状に仕上げます。
完成品のパッケージング
- 最終的な検品を行い、縫製や形状に問題がないか確認します。
- 保護カバーに梱包し出荷されます。
ここまでの長い過程を経て、私たちが使うグローブは出来上がっています。
多くの人と時間をかけて出来上がったと思うと、更にグローブに愛着が湧いてきますね。
参考動画の紹介
ここまで文字で解説してきた、皮からグローブになるまでの工程について、
YouTubeで動画が公開されていますので、参考にご紹介いたします。
鞣し工程の動画
鞣しの工程は、大阪でグローブを製造する「てっぺん」が運営するてっぺんチャンネルさんが公開してくれています。
実際にてっぺんのグローブで使用しているレザーの製造工程を紹介してくれています。
動画はこちらからご覧ください。
グローブ製造工程の動画
グローブの製造工程は、大手野球メーカーのミズノが公開してくれています。
グローブ好きなら一度は耳にしたことがある、「ミズノ 波賀工場」での製造工程が見れます!
動画はこちらからご覧ください。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
ここまで解説した内容をまとめると、
野球のグローブ作りには、革の特性を理解する深い知識と、高度な技術が必要です。
それぞれのグローブメーカーは、日々研究を重ねて、現代の高品質なグローブが誕生しています。
グローブ職人さんの技術を持って出来上がったグローブを、私たちは使わせていただいているという気持ちが大事です。
これからもグローブ好きとして、グローブ職人に感謝しながら、野球グローブを愛していきましょう!