当サイトでもメインで取り扱っている「野球グローブ」。
牛の革で作られていることはご存知の方も多いと思いますが、製造工程まで熟知されている方は少ないのではないでしょうか。
そこで当記事では、牛から取った皮がグローブになるまでの製造工程を詳しく解説します。
この記事を読めば、グローブ職人の技術の凄さを知ることができます。
野球グローブの製造工程を知って、愛用しているグローブをより大事に扱う心を持ちましょう。
野球のグローブは、職人の手作業によって非常に細かく丁寧に作られます。その製造プロセスには多くの工程があり、品質と耐久性を高めるための工夫が施されています。
皮から革へ(タンナー工場)

まず初めに、グローブの材料となる革(牛革)が出来上がるまでの工程を解説します。グローブの製造工程だけ知りたい方はこちらにスキップ。
簡単に工程をまとめると以下の通りとなります。
牛から取った「皮」はタンナー (皮を革にする製革業者)によって、鞣し(なめし)という工程を経て、私たちの身近な「革」に加工します。
工場によって細かな製造工程の違いがありますので、ここでは一般的なタンナー による鞣しの工程をご紹介します。
タンナー工場 工程①:原皮の洗浄
タンナー が仕入れる皮には、体毛や脂肪が付着した状態のままになっています。
そのため、まずは薬品で洗浄してそれらを落とします。
これらの洗浄を終えることで、革への加工の準備が完了します。
タンナー工場 工程②:鞣し作業
本来の皮だけの状態になったものを鞣していきます。
※鞣し(なめし)とは、皮が乾燥によって硬化したり、湿度によって腐敗してしまうのを防ぐために施される作業のことです。
主に、牛皮の鞣しで行われるのは以下の2パターンがあります。
この作業が完了すると、皮(スキン)から革(レザー)になります。
タンナー工場 工程③:染色と加脂
次に、鞣し作業が終わった革を染色して、油分を足していきます。
染色と加脂は同時に行われる場合が多く、オーダーに沿った革に加工していきます。
染料と脂を入れた大きなドラム容器に、革を一晩中浸しておくことで、革の内部まで浸透していきます。
タンナー工場 工程④:乾燥
前工程の染料や油脂を定着させるために、革を乾燥させていきます。
また、この段階では革に水分が含まれているため、加工しやすいようにする役割もあります。
乾燥方法はいくつかあり、革の状態や仕上がりをイメージして、最適な方法で乾燥させます。
様々な乾燥方法の中から、1つまたは複数の方法を選んで乾燥させています。
タンナー工場 工程⑤:仕上げ加工
乾燥が完了した革は、最後に必要な加工を施して出荷されます。
グローブの場合では、「表面塗装」や「型押し加工」などがあります。
このような鞣し工程を経て、柔軟性や耐久性、加工性に優れた革が作られます。
全ての工程が完了したら、検品を行い、各メーカーのグローブ工場へ引き渡されています。
革からグローブへ(グローブ工場)

次はタンナー工場で仕上がった1枚の革から、グローブが完成するまでの工程を解説します。
ここからの作業は、各グラブメーカーの工場で作業が行われます。
簡単に工程をまとめると以下の通りとなります。
メーカーや製造するモデルによって細かな製造工程の違いがありますので、ここでは一般的な製造工程をご紹介します。
グローブ工場 工程①:革の選定
まずは革の選定を行います。
メーカー(グローブ工場)は大量の革を仕入れて保管しています。
その中から、オーダーに合った革を選びます。
グローブに使われる革の種類については、別記事で詳しく解説していますので、こちらも読んでください!
グローブ工場 工程②:革の裁断・穴あけ
続いて、グローブのパーツに沿って裁断・穴あけしていきます。
選定した革から、どの部分を使用するか位置決めします。
使用する位置はある程度決まっており、重要な捕球面はハリのある背中や尻部分などを使用し、それ以外のパーツは首や腹部を使用する場合が多いです。
裁断方法は、各パーツ(捕球面、指部分、ウェブ部分など)の金型を使用したい革の位置に合わせてプレスすることで裁断・穴あけします。
裁断のほとんどは機械で行われますが、プロ野球選手向けのグローブは既製品からアレンジが加えられているため、手作業で裁断されることもあります。
グローブ工場 工程③:刻印・刺繍
裁断された革は、次に刻印や刺繍の加工を行っていきます。
グローブを縫製した後では革が平らにならないため、縫製前のこの段階でパーツごとに加工を行っています。
完成後の形を想像しながら、的確な場所に加工を行う技術は経験の賜物です!
グローブ工場 工程④:パーツの縫製
パーツの下準備が完了したら、手作業でグローブの形に縫製していきます。
革専用のミシンを使って、革パーツ、ハミダシ 、ヘリ革を糸で縫い合わせます。(ここでの糸は革紐ではなく、ステッチのこと)
縫製は細かな作業でありながら、グローブの最終的な形や耐久性に大きく影響するため、最も重要な作業と言えます。
グローブ工場 工程⑤:芯材の装着・紐通し
パーツの縫製が終わりグローブの形になったら、次は芯材の装着と紐通しをします。
ここまでの作業が終わると、グローブとしての形が完成します。
グローブ工場 工程⑥:仕上げ(軽めの型付け)
グローブとしての形が完成したので、そのまま出荷しても良いのですが、近年では軽めの型付けをした状態で出荷されることが多いです。
なぜなら、この時点でのグローブは硬すぎて全く開閉ができない状態だからです。
そこで、グローブの指の向きやポケットの成形などを軽く調整し、型のガイドをつけています。
グローブ工場 工程⑦:完成品のパッケージング
仕上げまで完了したグローブに対して、最終的な検品を行い、縫製や形状に問題がないか確認します。
問題がなかったグローブは、丁寧にパッケージングして、個人や店舗に出荷されていきます。
ここまでの長い過程を経て、私たちが使うグローブは出来上がっています。
参考動画の紹介
ここまで文字で解説してきた、皮からグローブになるまでの工程について、
YouTubeで動画が公開されていますので、参考にご紹介いたします。
【タンナー 工場】鞣し工程の作業動画
鞣しの工程は、大阪でグローブを製造する「てっぺん」が運営するてっぺんチャンネルさんが公開してくれています。
実際にてっぺんのグローブで使用しているレザーの製造工程を紹介してくれています。
【グローブ工場】グローブ製造の解説動画
グローブの製造工程は、大手野球メーカーのミズノが公開してくれています。
グローブ好きなら一度は耳にしたことがある、「ミズノ 波賀工場」での製造工程が見れます!
まとめ
野球には欠かせないグローブがどのように作られているのかわかりましたでしょうか。
ここまで解説した内容をまとめると、
野球のグローブ作りには、革の特性を理解する深い知識と、高度な技術が必要です。
それぞれのグローブメーカーは、日々研究を重ねて、現代の高品質なグローブが誕生しています。
グローブ職人さんの技術を持って出来上がったグローブを、私たちは使わせていただいているという気持ちが大事です。
これからもグローブ好きとして、グローブ職人に感謝しながら、野球グローブを愛していきましょう!