「グラブオイルA」と「グラブオイルB」の違いがわからないってことありますよね。
そんな時は、成分表を見ると違いがわかってきます!
実際に各メーカーは革の特性に応じて多彩な成分を調合しています。
- 革を柔らかくする油
- 表面に膜を作ってグリップを高めるワックス
- 汚れを分解する界面活性剤
- 乾燥を防ぐ保湿成分
この記事では、グラブオイルに含まれる主要成分を革への効果とともに体系的に解説しました。
成分を理解して、ただ塗るだけのメンテナンスから卒業しましょう!
「保革・グリップ向上・汚れ落とし」目的で選ぶべきグラブオイルの成分を徹底解説。
動物性油脂・植物油・シリコン・ワックス・界面活性剤など革への効果を詳しく紹介します。
グラブオイルの基本役割 — 何のために塗るのか
グローブの革は“タンパク質繊維(主にコラーゲン)”でできている
グローブは主に牛革でできています。
そんな牛革の主成分はタンパク質線維。
この繊維は水分や脂質を失うと、「収縮 → 硬化 → ひび割れ → 裂け・剥離」と劣化していきます。
そのため、グラブオイルを使った定期的なメンテナンスが必要不可欠です。
グラブオイルの種類と役割
グラブオイルの種類は以下の5つに分類されます。
目的によって成分も異なるため、合わないものを使うと革が重くなったり、逆に劣化させてしまうリスクもあるので注意が必要です。

用途ごとにおすすめなグラブオイルはこちらの別記事で詳しく解説しています。
グラブオイルに使われる主要成分とその効果
グラブオイルに含まれている成分は、商品の背面(底面)などに貼られている「内容表示シール」で確認できます。

グラブオイルで使われる成分は様々ありますが、「特徴」と「革への効果」の観点から、以下の10カテゴリーに分けることが出来ます。
| 成分カテゴリ | 主な成分 | 革への効果(要約) | 使用用途 |
|---|---|---|---|
| ① 動物性油脂 | ラノリン/ミンクオイル/スクワラン/牛脂 | 高い浸透力で柔軟性・粘り・耐久性を高める。ひび割れも防ぐ。 | 保革・革の柔軟化・グリップ力向上 |
| ② 鉱物性油脂 | 流動パラフィン/ワセリン/パラフィン系油脂 | 浸透性が低く、革の表面にとどまって保護膜を形成。 | 表面保護・乾燥対策・ツヤ出し |
| ③植物性油脂 | ホホバオイル・シアバターなど | 動物性油脂と比べて「軽い仕上がり」「香りがマイルド」 | 保革・革の柔軟化・艶出し |
| ④ 加脂剤 | 加脂剤/油剤 | 繊維を潤わせ、弾力や動きを改善。 | 油分補給・革の柔軟化・古いグラブの復活 |
| ⑤ シリコンオイル | シリコンオイル | 水の侵入を防ぎ、表面に膜を作りツヤを出す。 | 表面コーティング・ツヤ出し |
| ⑥ 有機溶剤 | 有機溶剤/アルコール/メチルセロソルブ/アンモニア石油系溶剤 | 表面の汚れや古いオイルを取り除く。オイルの浸透性を改善。 | 汚れ落とし |
| ⑦ 界面活性剤 | 界面活性剤/ノニオン系 | 革への負担を抑えつつ洗浄。塗りムラ防止にも貢献。 | 汚れ落とし・浸透性向上 |
| ⑧ 保湿剤 | グリセリン/水溶性保湿剤/保湿剤/水溶性溶剤 | 革の水分量を整え、硬化防止。 | 乾燥対策・柔軟性維持 |
| ⑨ 防腐剤・防カビ剤 | 防カビ剤/防腐剤 | 湿気に強くなり、カビによる劣化を防止。 | 湿気対策・長期保存 |
| ⑩ 補助成分 | ステアリン酸/増粘剤/乳化剤/有機化合物など | 革への効果は特になし。塗りやすさの改善や仕上がりの均一化。 | 成分の調和・品質維持・使用感の改善 |
お手持ちのグラブオイルや、購入を検討しているグラブオイルの成分表と見比べながら読んでみてくださいね。
①動物性油脂系(ラノリン系・ミンク系・スクワラン・ミツロウ・牛脂など)

動物性油脂は、動物の脂肪や皮脂から抽出される天然由来のオイルで、主にラノリンやミンクオイル、牛脂などが代表成分です。
これらの油脂は、革に含まれている“天然脂質”と性質が近いため、高い親和性を持ち、浸透しやすい特徴があります。
また、分子構造が柔らかく、低温でも硬化しにくいことから、グラブの柔軟性維持に適しています。
- ラノリン:羊毛を洗浄して得られる動物性油脂で、保湿と柔軟効果に優れる。
- ミンクオイル:ミンクの皮下脂肪から抽出される油脂で、高い浸透性と保革力を持つ。
- スクワラン:主に深海鮫肝油から得られる高浸透性オイルで、革の柔軟性と潤いを保つ。
- ミツロウ:ミツバチが生成する天然ワックスで、革表面に自然なツヤと撥水膜をつくる。
- 牛脂:牛の脂肪から作られる油脂で、革に深く浸透してしなやかさを与える。
革への効果
動物性油脂は他の油脂と比較して、最も革への浸透性が高いです。
それにより革繊維の間にスムーズに浸透し、失われた油分を補うことで革本来のしなやかさを取り戻します。
さらに、革内部で油膜を形成し、湿度変化や乾燥から繊維を保護することで柔軟性と耐久性が向上します。
ミンクオイルやラノリンは保湿性が高いため、革のひび割れや乾燥を防ぎ、使い込むほどに馴染みやすい状態へ導きます。
② 鉱物性油脂(パラフィン・ワセリンなど)

鉱物性油脂は、石油を精製して得られる純度の高いオイルです。
浸透性は低く、革の表面に留まりやすい性質があります。
パラフィンやワセリンが代表的で、不純物が極めて少なく化学的に安定しているため、酸化しにくい利点があります。
- パラフィンワックス(固形):石油を精製して作られるワックスで、耐水性に優れ表面保護性能が高い。
- 流動パラフィン(液体):石油を精製して得られる鉱物油で、酸化に強く保護膜を形成する。
- ワセリン:石油を高度精製して作られる半固形油脂で、耐水性の高い保護膜を形成する。
革への効果
浸透力が弱いため、革の表面にオイルが留まって膜を形成することで乾燥を防ぎます。
またオイルの膜を磨くことによって、ツヤを出すことも可能。
動物性油脂よりベタつきが少なく、均一な潤いを与えやすいため、扱いやすいのが特徴です。
また、酸化しにくいため革の黄ばみを抑え、長期保存にも向いています。
③植物性油脂(カルナバワックス・ホホバオイルなど)

植物性油脂とは、植物の種子・果実・胚芽などから採取される天然由来のオイルの総称です。
化粧品や皮革用コンディショナーにも広く使われており、動物性油脂と比べて「軽い仕上がり」「酸化しにくい」「香りがマイルド」という特徴を持っています。
浸透力は「動物性」と「鉱物性」の中間で、革への刺激が少ないのが特徴。
- カルナバワックス:カルナバヤシの葉から採れる植物性ワックスで、硬質の光沢膜と高い耐水性を与える。
- ホホバオイル:ホホバの種子から抽出される液体ワックスエステルで、浸透性が高く革の柔軟性と保湿を保つ。
- シアバター:シアの実(シアナッツ)から作られる植物油脂で、深い保湿力と柔軟効果を革に与える。
革への効果
植物性油脂は、適度な浸透力で革を柔らかくしつつも軽やかな質感へ整える効果があります。
動物性油脂のような強い保湿力はありませんが、その分ベタつきはなくサラッとした仕上がりになります。
また、革の表面に成分が適度に残ってくれるため、ツヤを出す効果もあります。
④ 加脂剤

加脂剤は革の内部に油脂を補給するための成分で、動物性・植物性・鉱物性の油脂がミックスされたものが多いです。
経年劣化で硬くなった革の柔軟性を取り戻す目的で使用されます。
革への効果
革の繊維一本一本に油脂を行き渡らせ、乾燥した革を柔らかく復活させます。
グラブの可動部分(捕球面・ウェブ・手のひら側)の動きが良くなり、捕球時のフィット感が改善されます。
⑤ シリコンオイル

シリコンオイルは、ケイ素を主成分とした合成油で、撥水性や滑り性が高い(べたつかない)のが特徴です。
分子構造が均一で安定しており、酸化しにくい点もメリットです。
革への効果
革の表面に耐水性の膜を作り、汗や雨など外部の水分侵入を防止します。
また、表面が均一になることでツヤ出し効果も非常に高いです。
ただし、過剰使用は革の呼吸を妨げる可能性があり、保革目的というより「表面保護(コーティング)」に向いた成分です。
⑥ 有機溶剤(アルコール、メチルセロソルブなど)

有機溶剤は古いオイルを溶かして除去する効果のある成分で、アルコール、メチルセロソルブなどが代表的です。
界面活性剤と併用されるケースが多く、洗浄力を向上させます。
- アルコール:発酵や合成から作られる揮発性溶剤で、脱脂や汚れ落としに用いられる。
- アンモニア:窒素化合物から合成される弱アルカリ性液体で、軽い汚れの分解に用いられる。
- メチルセロソルブ:石油化学から作られる強力な有機溶剤で、油汚れの除去能力が高い。
革への効果
革表面に付着した汚れ、皮脂、ワックス、古いオイルなどを効率よく溶解・除去します。
これにより新しいオイルの浸透がスムーズになり、メンテナンスの効果が高まります。
ただし強力な溶剤は油分を奪いすぎる可能性があり、使用後は必ず適切な保湿が必要です。
⑦ 界面活性剤

界面活性剤とは、本来混ざらない「水」と「油」の境界(界面)に作用して、分離を防ぎ、混ざりやすくする成分の総称です。
その効果は多岐にわたり、乳化、洗浄、起泡、分散、浸透を補助します。
グローブ用クリーナーでは、汚れ(皮脂・土中の油分)を浮かせて落としやすくしたり、保革成分を革の内部へ運びやすくしたりする目的で使用されます。
なお、ノニオン系界面活性剤は刺激が少ないのが特徴。
革への効果
界面活性剤は、固着した油汚れや指先の皮脂、土埃に含まれる微細な油分を浮かせて分離し、タオルで拭き取れる状態へ導きます。
また、汚れが落ちたことで革の繊維が解放され、その後に塗布する保革オイルがより深く浸透しやすくなるという副次的効果もあります。
ただし、洗浄力が強すぎる界面活性剤は革の脂分を過剰に奪ってしまうので、使用後は必ず適切な保革が必要です
⑧ 保湿剤(グリセリン・水溶性溶剤など)

保湿剤は革の内部に水分を保持する役割を持ち、グリセリンや水溶性溶剤が代表です。
柔軟性に関する水分量を調整する成分として用いられます。
- グリセリン:植物油や動物脂の分解から得られる多価アルコールで、高い保湿力を持つ。
革への効果
乾燥した革に適度な水分を戻し、柔軟性と粘りを高めます。
油脂だけでは補いきれない「しっとり感」を付与し、革が硬くなるのを防ぎます。
⑨ 防腐剤・防カビ剤

防腐剤・防カビ剤は、その名の通り菌の繁殖を抑えるための成分です。
革は有機物のため、湿度・汗・汚れが原因でカビや菌が発生しやすい特性があります。
防腐剤や防カビ剤はそれを防ぐために配合され、製品の長期保存性を高めます。
革への効果
表面に抗菌性の薄膜を作り、菌の繁殖を抑え、カビの発生を防ぎます。
特に梅雨時期や湿度の高い環境で大きな効果を発揮し、グラブの寿命を延ばす助けとなります。
⑩ 補助成分(ステアリン酸・増粘剤・乳化剤・有機化合物など)
グラブオイルには直接レザーへの影響がないが、構成上必要な成分や、+αとなる成分も含まれています。
それらをまとめて、ここでは補助成分と呼びます。
増粘剤はオイルの硬さ・伸びを調整するために使われ、乳化剤は水と油を均一に混ぜて安定させるための専門成分です。
有機化合物は特定の機能(乳化、分散、保存)を補助する目的で配合されます。
- ステアリン酸:動植物脂肪に含まれる飽和脂肪酸で、乳化・被膜形成に使われる。
革への効果
増粘剤はオイルを塗りやすくし、革へ均一に広げられるようにサポートします。
乳化剤は特にスプレータイプの液体オイルでは乳化が重要で、均質化された成分が毛穴や繊維の隙間にスーッと入り、乾燥した革を均一に整える働きをサポートします。
防腐剤・防カビ剤は表面に抗菌性の薄膜を作り、菌の繁殖を抑え、カビの発生を防ぎます。
まとめ
グラブオイルは、一見どれも似たように見えますが、その中身は大きく違います。
動物性油脂のように革を深く潤すものもあれば、シリコンのように表面をコーティングする成分、汚れを落とすために配合される溶剤や界面活性剤まで、目的に応じて必要な成分はまったく異なります。
とくに近年は、メーカーごとに成分バランスが大きく違うため、成分を知っておけば、あなたのグローブに最も合う1本を選べるようになります。
メンテナンスはただの「作業」ではなく、プレーの質を左右する技術です。
ぜひ今回の知識を活かし、あなたのグローブが最も良い状態で長く使えるよう、目的に合ったオイルを賢く選んでいきましょう。