湯もみ型付けは、誰もが知る定番の型付け手段となりましたね。YouTubeでもよく見かけるようになりました。
でも、「グローブをお湯に浸けても大丈夫なの?!」なんて思いません?
そこで当記事では、湯もみ型付けとは何なのかについて、徹底的に解説していきます!
野球グローブの湯もみ型付けは、実は50年以上の歴史があるんです!
この記事を読んで、なぜ湯もみ型付けを行っているのか考えていきましょう。
湯もみ型付けは、久保田スラッガーが発案した型付け技術で、専門の技術が必要です。
自宅でもできますがリスクも伴うため、自分でやるべきか、プロに任せるべきかを見極めることが重要です!
湯もみ型付けとは?

まずは、湯もみ型付けとは何なのかについて、簡単に説明しておきます。
その名の通り、お湯につけてから型付けを行う手法
湯もみ型付けとは、お湯に浸けたグローブを揉んで(叩いて)型付けを行う手法を指します。


革製品(グローブなど)を濡らすことはご法度とされてきましたが、現在では多くの野球ショップで対応するほど、定番の型付け方法となっています。
また昨今では、湯もみ型付けから派生した「水揉み型付け」や「ぬるま湯型付け」などもあり、現代の型付け文化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。
湯もみ型付けの生みの親は「久保田スラッガー」
現在では、オーソドックスになった「湯もみ型付け」ですが、数年前までは否定派も多かったでしょう。
なぜなら、グローブは革で出来ているからです。革とお湯の相性は悪く、変形やひび割れ、縮みなどのトラブルを引き起こす可能性があるからです。
そんなイメージを覆したのが、守備の名手も愛用するグローブメーカーの「久保田スラッガー」です。
発案者は江頭重利氏。まだグラブの型付け文化すらあまりなかった1960年代に思いついたそうです。
日刊スポーツのコラムでは、このように話されています。
「温めた石に水をかけると蒸気が出る。すると人間の皮膚は柔らかくなる。じゃあグラブだって、水にぬれた後に乾かして蒸気で温めたら柔らかくなるんじゃないかなと考えたんです」
引用:【鳥谷敬が名匠に会う】グラブ「湯もみ型付け」はなぜ誕生したのか90歳江頭重利氏が秘話明かす
当時の常識を打ち破った湯もみ型付けは、久保田スラッガーの代名詞となり、現在の標準となったんですね
湯もみ型付けのメリット

ここからは、湯もみ型付けのメリット(目的)を説明していきます。
メリットを簡単にまとめると以下の通りです。
グローブは湯もみをしなくても、日々使用することによって軟化していき型が形成されていきますが、
湯もみ型付けをすることによって、それらの工程を短縮する効果があります。
では、それぞれの目的について、さらに詳しく紹介していきます。
メリット①:グローブの軟化を早める
湯もみ型付けを行う目的の1つ目は、グローブの軟化を早めることです。
多くのグローブに使用されている革(ステアハイド、和牛など)は、強度と耐久性が非常に高くハリが強い革質です。
そのため、グローブが新品の状態から試合で使えるような柔らかさになるまでは、かなりの時間を要します。
これは、すぐにでもグローブを使いたい人にとって障壁となってしまいますが、
グローブをお湯に浸けて揉むことで、簡単に柔らかくすることができるんです!
専門的に解説すると、熱によって革の主成分であるコラーゲンが構造変化(ゼラチン化)し、繊維が解れて柔らかくなるという性質があります。
その解れた繊維の隙間に水分が入り込むことで、革が伸びて柔らかくなるということなんです。
また、後述するグローブを好みの型に記憶させる役割と合わせることで、
新品の硬いグローブを力任せに握った結果、変形した悪い癖(型)がついてしまうリスクを避けることにも繋がります。
メリット②:グローブを好みの型に記憶させる
湯もみ型付けを行う目的の2つ目は、グローブを好みの型に記憶させることです。
新品のグローブはメーカーが大まかな型を形成した状態で販売されています。(各グローブの理想的な型の基礎だけついているイメージ)
そのまま使用していくと、メーカーがつけた基礎に沿って型が形成されていきます。
しかしながら、自分の好みとは型が異なる場合もあるため、その時は湯もみ型付けを行って別の型に仕上げることが可能です。
これは、革の可塑性を利用していて、水分を含んだ状態で作った型を革に記憶させていっているのです。
理想の型を湯もみ型付けで成形し、グローブのパフォーマンスを最大限に活かすことが目的なんですね。
湯もみ型付けのデメリット

湯もみ型付けにも、当然デメリットが存在します。
もし湯もみ型付けに挑戦もしくは依頼する場合は、デメリットもしっかり理解しておきましょう。
簡単にデメリットをまとめると以下の通りです。
湯もみ型付けはリスクも多く、諸刃の剣のような側面もあります。
では、それぞれのデメリットについて、さらに詳しく紹介していきます。
デメリット①:革の耐久性が低下する可能性がある
湯もみ型付けをすると、グローブ(革)の耐久性が低下する。とよく言われています。
実はこれ誤解を招きやすい言葉で、私は「言葉が足りていないな~。」と感じています。
正しくは、グローブ(革)をお湯に浸けた後に、保湿・オイル補給をしっかり行わないと耐久性が低下する。だと考えています。
要するに、問題はグローブをお湯に浸けたことによって、油分が抜けてカピカピに乾燥しているにもかかわらず、
グローブに保湿やオイル補給をしないことで、ひび割れや劣化が早まるということなんです。
ですので、湯もみ型付けをしたグローブは、通常のグローブ以上にメンテナンスに気を配ってあげることで、革の耐久性が低下するリスクは避けることが出来ます。
※ただし、オイルを塗り過ぎると逆効果(革が呼吸できない)になるので注意が必要です。
デメリット②:グローブに硬さを残すのは難しい
続いて、湯もみ型付けしたグローブに硬さを残すことが難しいのもデメリットとして挙げられます。
”硬さが残っていて握りがいのあるグローブ”と、”柔らかくて手に馴染み切っているグローブ”のどちらが好みですか?
もし、硬さが残っているグローブが好みであれば、湯もみ型付けはおすすめしません。
グローブをお湯に短時間浸けただけでも、かなり軟化してしまいます。
湯もみ型付けでグローブに硬さを残すには高度な技術が必要なので、他の型付け方法を行うか、技術のある野球ショップのプロに依頼しましょう。
デメリット③:型付け方法の中でも難易度が高い
最後に、湯もみ型付けの最大のデメリットは、難易度の高さです。
湯もみ型付けは、湯の温度、時間、揉み方、乾かし方などのノウハウが必要なうえ、グローブによって適切な対応が変わっていきます。
そのため、湯もみ型付けに挑戦した人からは、「柔らかすぎてペシャンコ」「変なシワができた」などの失敗例が数多く聞かれます。
YouTubeの動画を見て安易に挑戦するのはやめましょう。
湯もみ型付けはどこで出来るの?

湯もみ型付けのメリット・デメリットを理解したうえで、湯もみ型付けをしたいと思われた方は、
次は、どこで湯もみ型付けを行うか決めましょう。
湯もみ型付けは、自分で行うことも可能ですし、野球ショップに依頼することも可能です。
基本的には野球ショップに依頼する方がメリットが大きいと考えていいでしょう。
では、それぞれについて、さらに詳しく紹介していきます。
野球ショップで依頼する
湯もみ型付けは、失敗すると型や状態を悪くするリスクがあるため、基本的にはスポーツショップや専門店でプロに依頼することをおすすめします。
専用の器具や技術を用いるため、短時間で高品質な仕上がりが期待できます。
ただし、安易にショップを決めるのではなく、依頼するショップをちゃんと見極めることが大事です。
なぜなら、野球ショップによって湯もみ型付けの技量が異なるからです。
そこで、野球ショップに任せる前に確認しておきたいのが、実績数と型付けサンプルです。
実績数はシンプルに担当スタッフの技量にも繋がりますし、型付けサンプルを確かめることで、自分が求めている型を再現できるかの指標になります。
「安いから...」と適切ではないショップに依頼すると、むしろグローブの状態が悪くなって返ってくるリスクもありますので、しっかりと下調べをしてからショップに依頼しましょう。
なお、価格は店舗によってバラバラですが、グローブ購入店舗での湯もみ型付けは3,000円〜5,000円ほど。
持ち込みグローブでの湯もみ型付けは、2倍の料金が相場でしょう。
自宅で行う(DIY)
「自分のグローブだから、自分で湯もみ型付けをやってみたい!」という方もいらっしゃるでしょう。
そういった方は、DIYで自宅で湯もみ型付けをすることも可能です。
ただし、リスクも伴いますので、全て自己責任で行いましょう。
DIYで湯もみ型付けを行うメリットは、型の細かなニュアンスにも対応できることです。
グローブの曲がる箇所、開き具合などを思いのままに型付けすることができます。
そのため、上手くいけば理想的な型に仕上げることができるでしょう。
ただし、型付け用の道具や、メンテナンス用品を一式揃える必要があるため、ある程度の出費が必要になるので注意しましょう。
なお、自分で湯もみ型付けを行う手順や注意点については、別記事で詳しく解説しています!
「湯もみ型付けに挑戦してみたい!」という方は、実践する前に必ず読んでおいてくださいね!
湯もみは型直しにも使える!
新品のグローブから最初の型付けとして行うことの多い「湯もみ型付け」ですが、実は既に柔らかくなったグローブの型直しとしても使える技術なんです。
「既に柔らかいグローブが、余計にフニャフニャになっちゃうんじゃないの?」と不安に感じるかもしれませんが、
既に使用されているグローブはある程度革が伸びきっているため、それ以上柔らかくなることはほぼありません。
要するに、新品の時は繊維が凝縮された状態から革が伸びることで柔らかくなったが、既に伸びきっている革は変化がないため現状と変わらないということになります。
そのため、硬さは変わらずに、湯もみ型付けのメリット②で説明した、革の可塑性を利用して型を作り直すことが出来ます。
ただし、革が摩擦で薄くなっているグローブなどは、革が破れるリスクがあるので湯もみでの型直しはしないように。
詳しくは別記事にて紹介しておりますので、興味がある方はこちらの記事を読んでくださいね。
まとめ
湯もみ型付けがどんな手法なのか、おわかりいただけたでしょうか。
ここまで解説した内容をまとめると、
湯もみ型付けを正しく行えば、グローブの性能が格段に向上します。
適切な方法で、ぜひ自分のプレースタイルに合ったグローブを育ててください!